理系大学生もそろそろ就活というタイミングになると、やっぱり自分の専攻なり研究なりを活かした就職先を考えるのではないでしょうか。
化学系だったら大きく分けて有機合成屋、無機材料屋、分析屋の3つがあると思います。
ちなみに私は、大学・大学院と生化学を専攻していたので、生化学系の材料開発もやってる化学メーカーに就職しました。当然生化学系材料の開発に携われると思ってたんですが、入社すると生化学は全然関係ないザ・化学の分析系の研究グループに配属されました。
恥ずかしながら働く前までそんな仕事があることも知らず、化学って社会の幅広いところで使われてるんだなあと感動したものです。
ということで、今回は、
「分析化学系の研究室にいるから分析化学を活かした仕事をしたい!」
とか
「違う研究室にいるけど、分析化学系の仕事ってどんなことすんのかな?」
とか
私のように入社したら分析系に配属ですって言われて「え?何それ?」って感じの人
に向けて、
- 化学メーカーでの分析系研究職の仕事内容
- 分析系研究職のやりがい、辛いこと
がわかる記事を書きます。
実は、今は転職して別の仕事をしていますが、化学メーカーでの分析職は3年ほどやってきました。大学院の修士課程まで行った方ならわかると思いますが、2〜3年同じことをしていればだいたい概要を掴むことができます。なのでそれなりに的を射たことを言っていると思います。
仕事内容
まず、仕事の内容について紹介しましょう。
①依頼に基づく分析業務
まず1つ目は、他の研究グループからの依頼分析業務です。
メーカーってのは、日々新製品の開発に取り組んでます。その中で重要なのがライバル社製品です。
意外に思われる人もいるかもしれませんが、他社が発表した新製品や改良品を入手して、成分を分析し自社での開発の参考にしています。
そんなスパイみたいなことを?!と思われるかもしれませんが、これは割とどこのメーカーでもやってます。
この成分の分析業務を分析グループで行なっていました。
具体的な業務フローは、分析依頼書と試料を受け取り、自分の化学の知識を動員して、依頼された内容についての分析を行います。(pHのような簡単なものから、ポリマーの重合度や質量分布、金属元素の有無や定量などさまざまです)
その分析結果を依頼元の部門にフィードバックします。
②開発品のデータ取り
2つ目は、開発段階の製品のデータ取りです。
新製品を販売するためには、各種法令を遵守する必要があり、基準を満たしているかどうかのデータ取りを行う必要があります。これを行なっていました。
測定項目には、BODやCODの測定、ヒ素や鉛などの有毒物質の測定などがあります。
このデータ取りについては、ある程度方法論が決まっているので、どちらかというとルーチン的な業務ですね。
③新規分析法の開発
これが、分析系研究職の花形業務です。
世間でまだ確立されてない分析方法の確立業務です。
と言ってもそこは企業での仕事。何の意味もない趣味みたいな分析法を確立するわけではありません。
自社にとって分析する必要があるけど、現段階で技術的にできないものを分析できるようにするというのが任務です。
例として私が携わった事例を紹介します。
現在、新規開発中の製品があります。この製品の主成分A の合成がどうにもうまくいかないそうです。調べると、どうやら合成反応途中にどうしても副生成物Bができて、このBが悪さをしてる(反応を阻害している)らしいことがわかりました。
この副生成物Bがあるのはわかるんだけど、量がどれだけあるのかが調べられない(定量できない)。この副生成物Bの定量ができないので、反応条件を振っても、どの反応条件が良いのか決めることができません。
ということで、私のところに依頼がやってきました。この副生成物Bの定量方法を確立せよ。という指示です。
これはちょうど私が2年目のときに担当した仕事でしたが、なかなか大変でした。言うてもまだ社会人2年目のペーペーですし、大学は化学専攻はまあそうなんだけど、研究室では大腸菌に遺伝子組換えのプラスミドDNAを導入して、変異を導入したタンパク質の性質とかを調べてたんで、化学反応とかあんまりわからない・・・
結局、反応物をなんとかして溶液化して、誘導体化した後、分液漏斗で抽出、ガスクロで定量するという方法を確立することができました。先輩に相談しながらも一連の方法論を確立できた時には、大きく成長したなと実感したものです。
やりがい
私がこの仕事を通じて感じたやりがいは、③の新規分析法の開発で感じることが多かったです。
それは、自分の化学の知識を使って、誰もできないことをできるようになったと感じられたからでしょう。
配属当初は、生化学系の材料を開発したい!何か価値のあるものを生み出したい!と鼻息を荒くして、正直分析化学なんて調べるだけでこの世に価値を生み出すものじゃない。なんて思ってました。
ですが、実際に就職して分析化学を仕事にして、物を生み出すだけが価値あることではないということがわかりました。そもそも、物を生み出して商品にするためには、それを分析して定量する必要があります。なので、「物を生み出すこと」と「分析方法を作ること」は車の両輪で、同価値だと思います。
そして分析屋のスペシャリストになれば社内でものすごい重宝されます。次から次へと依頼がやってくるようになります。
辛いところ
「やりがい」と「辛いところ」は表裏の関係にあるように思います。
やはり、何をやっても結果が出ない時が辛いです。学生時代の研究であればぶっちゃけ結果が出なくても(博士課程じゃなきゃ)卒業できます。
ですが、会社で結果が出ないと上司からのプレッシャーがかなりありました。〇〇日までに結果を出せ。と毎日言われます・・・
本当に会社に行くのが辛かったです。これは、分析屋さんに限らず研究職をやっていく者の宿命だと思いますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。化学メーカーでの分析研究業務といってもルーチンワークから本当に研究!って感じの仕事まで様々です。
私自身の経歴もそうなんですが、もともと分析化学専攻で分析が好きな人はもちろんのこと、有機合成とか無機材料1本でやっていくつもりの人も、ちょっと考えてみる価値はあるのかと思います。