今回は、2019年5月20日発売の「いちばんやさしい量子コンピューターの教本」を完読したのでレビューします。
結論:かなりおすすめの本です
まず結論です。この本はかなりおすすめできる本です!
私がおすすめする読者は、
- 物理とか情報系の学部に入ったばかりで「量子論」にほとんど触れていない初学者
- 「量子情報科学」とか「量子力学」の勉強をしているけどチンプンカンプンな人
- 理系的素養が多少はある「量子コンピューター」に興味を持った人です。
「理系的素養が多少はある」ってのが何とも抽象的で申し訳ないんですが、例えば「パソコン、怖ーい」って人はさすがに通読するのは難しいかもです・・・
例えば、コンピューターの計算は、ビットという0と1だけで計算されていて・・・って言われてもアレルギーを示さない程度の人くらいの意味で受け取ってください。
で、おすすめ読者さんがこの本を読み終えた後には
- 量子コンピューターの全体像がつかめる
- 勉強のモチベーションが上がる
- 自分の向かうべき道が見えてくる(かも)
という自分が手に入ると思います。
では、順に、この本のおすすめポイントをお話しします。
数式がないのに説明は簡潔!
まず1つの理由として、本当に数式がありません。にも関わらず、とてもわかりやすいです。
「にも関わらず」と言ったのは、私の経験上、「数式がなく初心者でもわかります!」と謳った本は、数式なしで説明するために逆に説明文がまどろっこしくて、お世辞にもわかりやすいとは言えないものばかりだからです。
ですが、この本はイメージ図と簡潔な言葉を使って端的に説明しており、初学者がイメージをつかむのにぴったりだと思います。
もちろん、今後きちんと量子コンピューターを理解していくためには数式からは逃げられませんし、この本でも少しかわしてるなって所もありましたが、それはこの本の目的が、厳密性を追求するよりも初学者が全体を掴むことにあるので何の問題もないと思います。
こんなにわかりやすく説明できるなんて、著者は相当頭が良いということがよくわかります。
その証拠と言っては何ですが、私、2019年5月17日に大阪で開催された第406回CBI学会の講演会に参加してまして、実際に著者の湊雄一郎さんの講演を聞いてきました。
その時に感じたのは、やっぱりめちゃくちゃ頭の回転が良いということと、難しいことをわかりやすく説明するのがとてもうまいということです。湊さんのプレゼンに、気づけばグッと引き込まれて聞き入ってました。
後半の章では実際に体験できる
また、後半の章では、実際にBlueqatというシミュレーターを使って量子コンピュターの挙動を再現する体験もできます!
これは本当に興奮しました!(語彙力がなくてすみません・・・)
「量子コンピューター」というどこか遠くの世界にあるものを身近に感じられるという経験が、自分に与えた衝撃はものすごいものがあります
というのも、私は量子コンピューターとは何の関係もない仕事をしながらも、自宅で時間を見つけては趣味で線形代数とか量子計算理論の勉強をしてる身なんですが、好きでやってるにも関わらず「この勉強って自分にとって何の意味があるんだろ・・・?」とむなしい気持ちになるときがあったりします・・・
今回この本を読み、シミュレーションとはいえ量子コンピューターの動きを体験したことで、私としては今までの勉強の意味づけができてモチベーションがめちゃくちゃ上がりました!ありがとうございます湊さん!
それと、量子論ってはっきり言ってどれだけ勉強してもモヤモヤが残ります。納得感を得にくい非常にまれな分野だなと個人的に思ってるんですが(それが魅力でもあるんですが・・)、目の前のパソコンのスクリーン上で計算結果を確認することで、教科書だとモヤモヤしてたことも自然と受け入れやすくなったというのもこの本のおかげだなあと思います。
↓↓はちょっと見にくいですが、パソコンでベル状態を作ってみた結果です。
これを見ても何をやってるのかわかんないかもですが、本を読めばわかりますのでご安心を。
実際には、PythonやBlueqatをインストールしないといけなんですがインストール方法もきちんと本にも書いてあるので安心です。
これは完全な余談ですが、私は常々Pythonの勉強とか機械学習とかもやりたいと思ってたので、これは良い機会ということで、Macの仮想環境にPythonをインストールしようとしたんですがはっきりいって知識がなく、かなり苦労しました・・・
もしかしたら、あんまりターミナルに詳しくないMacユーザーの人もいるかもしれないので、この辺の話も別の機会に紹介したいと思っています。
フォローも早い
もう1つ良いと思った点は、読者が疑問に思いそうな点が、すぐにフォローされている点です。
私も読んでいて「なぜ??」と思うことがありました。
が、すぐ次の段落で、”これに疑問を感じる人もいるでしょう”と、フォローの言葉とその疑問への答えが書いてあり、読者がつまずかないための配慮がすごいなあと、まるでリッツ・カールトンのようなホスピタリティ!(ちょっと使い方おかしいかもしれません笑まあ気にしない)
また、これ以上説明しようとすると明らかに初学者がドツボにはまってしまう箇所は大胆に削除されています。これも絶妙でした。ブロッホ球の説明をこれ以上詳しくすると、きっと初学者はそこでこの本を読むのをやめると思います笑
まとめ
以上の点で、私はこの本を非常におすすめします!
量子コンピューターの勉強にモチベーションが高い人ももちろんおすすめなんですが、勉強始めたけどイマイチモチベーションの持っていき方に困ってる人にも非常にオススメです。